歯周再生療法(リグロス、エムドゲイン)

まず、歯周病とは字の通り「歯の周りが病気」になります。つまり、歯を支えている骨をはじめ、歯肉や歯根膜などが破壊されることで、歯がグラグラなり抜けてしまう病気です。そして、歯周病の方は、今まで歯科医院で「歯周病は進行を止めるくらいしかできない」、「一度ぐらぐらになったら抜くしかない」、と言われた経験がある方もいると思います。

それは、歯周病で失った骨が自然と戻ることはなく、皆さんがよく受ける、歯石の除去やプラークの除去、歯ブラシの徹底といった、通常の治療を行ったとしても、一度、大きく失った歯を支える骨を回復させることが難しいからです。たとえば、風邪のように「喉が痛くても治ってしまえば、基本、喉の細胞は元通りに治る」という病気とは、歯周病は違うのです。

このような、通常の治療では歯を支える組織を再生することができないところを、可能とした治療が「歯周組織再生療法」といいます。現在、主な方法としては、「リグロス」や「エムドゲイン」といった薬剤を使用する方法があげられます。

リグロスとは

リグロスとは

元々、医科で2001年から使われている皮膚再生薬剤があります。

それが、歯周再生治療にも有効であると考え、同じく2001年から、日本の科研製薬という会社によって、日本国内で1,000名の歯周炎患者を対象とした5つの臨床試験を実施し、歯周組織再生に対する有効性及び安全性が確認され、2016年9月に「リグロスⓇ歯科用液キット」として使われ始めました。

歯周病治療に使われるリグロスは、医科分野で使われている薬剤の濃度を歯科用で効果を発揮するように濃く調整されたものです。

オペ前

リグロスによる歯周再生治療後1年

左 オペ前
右 リグロスによる歯周再生治療後1年

リグロスは商品名であり、薬剤の成分は「ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor(bFGFと略します)、一般名:トラフェルミン」といいます。

この成分によって、歯を支える骨をはじめ、歯と骨をつなぐセメント質などが再生されます。


エムドゲインとは

エムドゲインとは

エムドゲインとは、1995年にスウェーデンで治療が始まり、日本では1998年に厚生労働省に認可されました。

世界中の40カ国以上で使用され、2001年に改良型の「エムドゲインゲル」が認可され、今も使用され続けています。今まで200万本以上が販売されている上で、エムドゲインゲルに起因した副作用は、いまだ一つも報告されておりません。

リグロスとの違いは、この歴史もあるでしょう。エムドゲインの成分は、生後6ヶ月の豚の歯胚から抽出・精製したタンパク質分画(エナメルマトリックスデリバティブ)です。動物からつくられているの?と思うかもしれませんが、医療においては、動物由来からつくられている材料は珍しくなく、一般的なものといえます。基本的に、使用目的はリグロスと同じで、通常の歯周病治療では、ほとんど回復させることのできない骨を、再生させることで、抜歯を回避することにあります。



著者経歴

佐藤優樹

佐藤優樹

  • 2003 年 鶴見大学歯学部卒業
  • 2006 年 エムズ歯科クリニック勤務

[主な所属・役職]

  • 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
  • ICOI(International Congress of Oral Implantologists)指導医
  • 日本顎咬合学会会員
  • 日本口腔インプラント学会会員
  • 日本歯周病学会会員