滅菌と消毒とは?
消毒と滅菌の違い
「消毒」とは、人体に有害な物質のみを無菌化することです。
「滅菌」とは、すべての微生物を有害・無害を問わず、死滅・除去することです。
エムズ歯科クリニックにおける感染予防対策について
歯科において推奨される項目
1)感染防止の向上と歯科医療従事者の健康維持を行うこと
2)科学的根拠に基づくガイドラインに則った感染予防方針とその手順を作成し、施設において適切に管理、維持、実施すること
3)スタンダードプリコーションを守るために必要な対策を行うこと
4)感染予防の訓練を受けた責任者を少なくとも1人配置すること
当院の歯科衛生士の中には、第二種滅菌技士が1名と滅菌技士講義受講者多数がおります。滅菌技士とは、医療施設における滅菌供給の知識や技術を認定する資格です。より専門的な知識を身につけるため、毎年行われる滅菌技士講習会に参加します。
エムズ歯科クリニックにおけるスタンダードプリコーション
医院の感染対策はスタンダードプリコーションと感染経路別予防策から成り立ちます。
スタンダードプリコーションとは
感染症の有無に関わらず、全ての患者さんの血液・唾液・分泌物・排泄物・損傷のある皮膚・粘膜が乾癬の可能性があるとみなして対応することです。感染症には検査しても陽性と出ることもなく他の人に感染させてしまう潜伏期間があり、未知なる感染症もあります。
検査で陽性とわかっている人は氷山の一角であるため、「誰もが何らかの感染症を持っているかもしれない」と考えて、すべての患者さんに対して感染を予防する必要があります。
感染経路
感染経路は一般的に以下の4つに分類されます。
1.飛沫感染
2.空気感染
3.接触感染
4.物質媒介型感染
医療感染で最も頻度の高い感染経路は3.接触感染です。これには感染者から直接感染する場合と、不十分な手洗い、汚染状態の器具を介して起こる物質媒介感染があります。
エムズ歯科におけるスタンダードプリコーションは以下12項目に沿って行います。
手指衛生
すべての医療行為の基本となり、感染防止に対して一番大きな役割を果たすのが手指衛生です。
ドアノブやパソコンのキーボードなど、人の手指は思いのほか多くものに触れています。それらに付着した菌やウイルスの移った手で目や口元を触ることにより感染リスクが高まるため、手洗いを適切に行うことで院内感染を減少させることができます。
手指衛生には「スクラブ法」と「ラビング法」の二つがあります。
スクラブ法
石鹸などの手洗い剤を用いる消毒法です。目に見える汚れが付着している場合や、外部への出入り時、化粧室使用時に行うことが推奨されています。
手順
1.流水で手をよく濡らし、手洗い用消毒剤を手のひらにつけ、両手のひらをすり合わせて泡立てる
2.両手の甲をそれぞれ反対の手のひらで包み込むように洗う
3.両手指を組み合わせ、指の間をしっかり洗う
4.親指を片手で包み、もみ洗いし反対側も同様に行う
5.指先をもう片方の手のひらに擦り付け、よく洗い、反対側も同様に洗う
6.手首を手のひらで掴み、上下左右にスライドさせ洗う
7.流水でよく洗い流す
8.ペーパータオルで水気をしっかり拭き取り、そのペーパータオルを用いて蛇口を閉める
1~8のステップを少なくとも20秒以上の十分な時間をかけて洗うことが重要です。
ラビング法
アルコール消毒剤などを利用して手指の殺菌を行う「ラビング法」
あきらかな汚れがない時、または十分な手洗いを行えない時に用いる方法です。
水場やタオルがなくても行えます。
手順
1.ポンプを1プッシュし、消毒剤を手のひらに受ける
2.手のひらに消毒剤をすり込み、さらに両手の指先を手のひらとすり合わせ、しっかり消毒する
3.両手の甲にもそれぞれすり込む
4.指の間と親指も忘れず丁寧に消毒する
5.手首にも乾燥するまですり込む
スクラブ法と組み合わせることにより、手指衛生をより清潔に保てます。
スクラブ法→ラビング法の順に行うことが重要です。
汚染した器具・歯材の取扱い
感染リスク
使用した器具の再生処理は、感染リスクに応じ3つに分類され、のちに説明する消毒水準もそのレベルに合わせ3つに分類されています。
危険度:★★★
血管など無菌の組織に挿入されるもの
危険度:★★☆
粘膜・病的な皮膚に接触するもの
危険度:★☆☆
傷のない皮膚と接触するもの
歯科器具の洗浄~滅菌
〈洗浄〉
歯科における主な洗浄の方法として、
① 用手洗浄
② 浸漬洗浄
③ 超音波洗浄
の3つの方法があります。
器具は使用後すみやかに確実な洗浄を行うことで、99.99%の物理的な除菌ができ、傷のない手で触れても感染の危険性はほぼゼ口と言われています。洗浄行為は消毒に近い効果が期待でき、感染リスクを低減させることができます。
① 用手洗浄
洗浄剤とブラシやスポンジを使って物理的に汚れを取り除く方法で、器材が少ない場合や機械洗浄ができない器材には有効です。
② 浸漬洗浄
器材を水で希釈したハイジーンウォッシュ®に浸けることで汚れを除去する方法です。血液や体液など付着物を分解・除去しやすくし、効率的な洗浄が行えます。
③ 超音波洗浄
超音波器内に希釈したハイジーンウォッシュ®をいれ、超音波を発生させることにより、液体中の泡による衝撃波と水の分子を洗浄物にぶつけ、キャビテーション効果で汚れを落とします。これにより、目に見えない器材の細部まで短時間で洗浄することができます。血液やタンパク質の汚れが固まってしまった場合、浸漬洗浄を行ったのちに超音波洗浄を行うと効果的です。
〈消毒
消毒レベルには、以下の
① 高水準消毒
② 中水準消毒
③ 低水準消毒
の3段階に分けられます。
① 高水準消毒
芽胞が多数存在する場合を除き、すべての微生物を死滅させる
② 中水準消毒
ほとんどのウイルスとほとんどの真菌を不活化させる
③ 低水準消毒
ほとんどの栄養型細菌、ある種のウイルス、ある種の真菌を殺滅する
〈滅菌〉
オートクレーブやガス滅菌機ではほとんどの細菌、数種のウイルス、数種の真菌を死滅させることができます。
・滅菌の種類
オートクレーブ
当院ではオートクレーブを使用しています。
オートクレーブ滅菌はチャンバー内で適当な温度と圧力の飽和水蒸気の中で加熱し、発生した水分が、タンパク凝固を促進して微生物を死滅させます。
オートクレーブのメリット
・温度上昇が早く、蒸気の浸透性があるので深部まで効果が及ぶ。
・芽胞に対しても除去の確実性が高い。
・留毒性がない。
ガス滅菌
熱に耐えられない器具やオートクレーブ滅菌ではサビてしまう器具の滅菌に適しています。エチレンオキサイドガス(EOG)により菌を死滅させます。
ガス滅菌のメリット
・低温滅菌ができるため、加熱による材質の変化が少ない。
・非耐熱性器具も滅菌できる。
・EOGは浸透性が高いため、包装やシールをしても滅菌可能。
滅菌後の片づけ方
滅菌が終わったら、滅菌摂子、滅菌ピンセットを使用して滅菌した物を取り出し所定の場所に片付ける。
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著者経歴
田口 智子
- 2016年 鶴見大学短期大学部歯科衛生科 卒業
- 2016年 エムズ歯科クリニック祐天寺 入社
- 2018年 ホワイトニングコーディネーター 取得
- 2020年 エムズ歯科クリニックマネージャー 就任
[主な所属・役職]
- インプラント学会認定歯科衛生士
- 歯周病学会会員
- 審美歯科学会会員
- 麻酔歯科学会会員