それでもむし歯ができてしまったら
むし歯は、早期発見、早期治療が大切です。むし歯の種類、大きさ、症状などにより、診断をし、治療方法を選択します。
むし歯とは
むし歯は、口の中の細菌が出す酸が歯の一番かたいエナメル質を溶かしてしまうことからはじまります。その後、エナメル質よりもやわらかい象牙質、歯髄へと進行します。この頃になると、歯が痛みだします。
むし歯の原因
基本的にはブラッシングがうまくできず、磨き残しにより、むし歯になってしまうことが多いです。また、歯と詰め物の間に隙間がある場合や歯にヒビが入ってしまっている場合もその隙間に細菌が入り込んでむし歯が進行していくことも少なくありません。
むし歯の種類
慢性う蝕と急性う蝕に分けられます。慢性う蝕は、中高年の方に多く、進行速度はかなりゆっくりです。
そのため、症状が出にくく、痛くなって歯科医院に来院する頃には、神経に達するようなかなり大きいむし歯になっていることが多いです。急性う蝕とは、若い方に多く、進行速度は極めて早いです。そのため、症状が現れるまでの期間も比較的早くなります。それだけに、日頃の定期検診による早期発見、早期治療が重要になってきます。
痛みの原因
歯の構造(エナメル質、象牙質、歯髄)
歯は外側から神経までで考えると、エナメル質、象牙質、歯髄の3層から構成されています。
エナメル質とは、歯の一番外側を覆っている人間の体の中で最も硬い組織です。知覚はないため、むし歯がエナメル質に限局する場合、しみたり、痛んだりすることはありません。象牙質はエナメル質の下の層で、歯の2層目になります。エナメル質より柔らかく、むし歯の原因となる酸にも溶けやすいです。象牙細管という細い菅が通っていて、口腔内に露出するとしみたりすることが多いです。歯髄は象牙質の下の層で、歯の3層目になります。いわゆる神経と呼ばれる組織です。神経線維の他に、血管やリンパ液などが通っており、歯に栄養を送っています。ここまでむし歯が到達すると非常に強い痛みを感じることが多いです。
むし歯の進行度
むし歯の進行度は4段階に分けられます。
C1(むし歯の第1段階)
歯の表面をおおっているエナメル質が脱灰(歯が溶ける)している状態です。痛みは感じません。歯の表面が白く濁っていたり、茶色等に着色してザラついていたりします。
C2(むし歯の第2段階)
歯の2層目、象牙質の層にまでむし歯が進行し、穴があいている状態です。冷たいものを食べたり飲んだりすると一過性に歯がしみたり、痛んだりします。
C3(むし歯の第3段階)
歯の3層目、歯髄(神経)の層までむし歯が進行した状態です。大きな穴が空いていることが多く、炎症を起こすと、激しい自発痛を起こすことがあります。夜も眠れないほど痛むことも少なくありません。
C4(むし歯の第4段階)
歯冠(歯の頭の部分)はむし歯によって失われ、根だけが残ってしまった状態です。このままにしておくと根管(歯の根)の中を細菌が通って行き、顎の骨の中に膿を作ります。また急性的に顎の骨の中に炎症が起こると、骨髄炎という状態となり、入院や点滴が必要になることもあります。最悪の場合、全身に細菌が周り、敗血症という重篤な病気になることもあります。
治療法
CR(コンポジットレジン)
光固まる光硬化型樹脂です。いわゆる白いプラスチック樹脂とも言われています。むし歯の範囲が小さい場合に使用されることが多く、治療回数が1回で終わります。歯よりは柔らかいので、奥歯で咬合力がかかるところや、噛む力が強い方などは割れやすいです。
インレー
むし歯を除去後、歯の形を整え、型取りをして、作成する部分的な詰め物です。CRが1回で終わるのに対し、基本的には型を取って仮蓋をし、次回来院時、出来上がった詰め物を装着するので、来院回数が2-3回かかります。インレーの材料は、金属やハイブリッドレジン(陶材の粒子をレジンに混ぜ込んだもの)、セラミックなど様々な種類があります。
クラウン
むし歯を除去後、歯の形を整え、型取りをして、作成する歯の全体を覆う被せ物です。インレーと同じく基本的に来院回数は2回です。こちらも金属やハイブリッドレジン、セラミックなど様々な種類があります。
ラミネートベニア
歯の表面を一層薄く削り、セラミックを歯の表面に貼り付ける詰め物です。前歯によく使われます。イメージ的にはつけ爪です。クラウンと比較すると全周歯を削らないので、削る量は少ないです。保険外診療のみとなります。基本的にはセラミックのみです。
フッ素塗布
歯科で使用されるのはフッ素化合物と言われるものです。歯の脱灰、いわゆる初期むし歯と言われる状態に対してフッ素塗布を行います。フッ素を塗布することにより、エナメル質の強化、初期むし歯の修復を助ける再石灰化、むし歯菌の抑制が期待できます。
著者経歴
庄司 匡道
- 2013年明海大学歯学部卒業
- 2014年昭和大学歯学部研修医
- 2015年エムズ歯科クリニック入社
- 2017年エムズ歯科クリニック弘明寺院長就任
- 2022年エムズ歯科クリニック学術就任