菌を体の中に入らせない

歯内治療とは

歯内治療

歯内治療とは「神経抜かれた!」という治療方法

歯内治療とは、歯の治療をして、皆さんがよく聞く言葉で、「神経抜かれた!」という治療方法です。ではなぜ、その神経を抜くことが必要なのでしょうか?

ばい菌が神経のある部屋に入ることがあるのですが、そのばい菌が悪さをして、痛みが出たり、歯茎が腫れたりするので、ばい菌で犯された歯髄を除去しないと治らないためです。では、ばい菌はどのように神経の部屋に入ってくるのでしょうか?

一番よくあるのが、むし歯です。歯の構造は、一番外にエナメル質、その内側に象牙質があり、一番中心部に神経の部屋である歯髄があります。エナメル質は歯の防御壁の役割をしていて、この部分だけのむし歯であれば、しみたりはしません。

エナメル質がむし歯で溶けて、次の層である象牙質に及ぶと象牙質には歯髄に通じる細い管があるので、しみたり痛みを感じるようになります。神経の部屋に入るばい菌の量が少なく、一過性の炎症で治る場合は、全ての神経を取る必要はありません。悪くなった歯髄を取り除き、部分的に歯髄を温存する、生活歯髄療法(VPT)という治療方法があります。

生活歯髄療法(VPT) 01

生活歯髄療法(VPT) 02

歯髄全体的に悪くなった場合は、神経を全て抜くことになり、抜髄と言います。ばい菌が歯髄全体に及び、さらに根の先端から顎骨の中まで及ぶ場合もあります。

その際は、感染根管治療をおこないます。神経が全て壊死した場合の治療方法です。基本的に歯内治療は顎骨まで及ぶ炎症にならないように、治療をしたり予防をすることが目標となります。

生活歯髄療法(VPT) 03

ラバーダム防湿

ラバーダム防湿 01

唾液を入らないようにするために歯の周りにゴムのカバーをつけて歯の中に唾液が入らないように

ラバーダム防湿 02

前にも書きましたが、神経が悪くなる原因は細菌(ばい菌)です。処置はできるだけ無菌的に行うことが大事です。口腔内は体の中で一番汚いところでもあります。歯を削って神経の部屋にあるばい菌を除去すべく神経を取るのですが、口腔内があまりにも汚いため、消毒液で神経の部屋の中を洗っても、汚い唾液が入り込んで、逆に汚くなります。

そこで、唾液を入らないようにするために歯の周りにゴムのカバーをつけて歯の中に唾液が入らないようにします。これがラバーダム防湿というものです。これを行っていない治療は、はっきり言って歯の中にばい菌を入れる処置をするという、感染させていることになります。結果、何年かすると痛みが出てきたり、腫れたりするようになります。

マイクロスコープ

いわゆる強力なライトが付いている顕微鏡です。歯の中にある小さな構造物を識別するために使用します。神経の部屋は暗くて狭い上に、その部屋から出ている歯の神経の管の直径は0.1mm以下のものもあります。

そのような細い管にもばい菌は生息します。マイクロスコープを使用することで肉眼では探せなかった汚染部位をさがせるようになります。

マイクロスコープZwiss home pageより

NiTiファイル

NiTiファイル
Dentsply Sirona Japan home pageより

現在の主流であるニッケルチタンでできたファイルです。ファイルというのは神経をとったり神経が通っている根の管を綺麗にするための”やすり”です。根の管はまっすぐではないので、その形にできるだけ追従することによって管の中を綺麗にすることができます。ニッケルチタンファイルは、昔主流だったステンレススチールのファイルよりも根管の追従性が高く、汚染物の除去や、根管の形成に不可欠です。

Bio Ceramic

Bio Ceramic

保険適応外の治療で使用していますが、神経を取った後、その空間を埋める薬として使用される材料です。保険適応していない分、高価でありますが、この材料が固まる際に膨張するためしっかりと密閉できます。しっかり密閉できるので、ばい菌の侵入を防ぎ根管を清潔に保ちます。

歯根端切除

歯根端切除MORITA MedVisor Dental より

根の治療でうまくいかなかった場合、病変のある根の先端を切除することによって、治療を行う方法です。歯茎に麻酔をして、切開し、歯槽骨を開削し、病変のある根尖を明示して切除しますので、外科的な治療となります。

再植

再植
Kim S & Kratchman S. Willey-Blackwell, 2017

根の先端に病変があった際、非外科の根管治療や歯根端切除で対応できない歯の場合は、一度その歯を抜歯して、原因である根の先端を切除し、再度抜歯した歯を元に戻します。

治療の予後

一般的に初めて根管治療する場合は治療の成功率は90%以上と言われています。根の先端に病変があったり、根管の形態が壊れている場合は成功率は40~80%と幅があります。根管治療で治らない場合は、外科的歯内療法の歯根端切除や再植を行うことで、歯を救う確率が上がります。



著者経歴

大科 英和

大科英和

  • 2003年3月 新潟大学歯学部 卒
  • 2007年3月 東京医科歯科大学大学院 卒
  • 2007年4月 千葉がんセンター麻酔科医員
  • 2007年10月 東京医科歯科大学顎口腔外科医員
  • 2008年4月 エムズ歯科クリニック祐天寺 院長
  • 2016年10月 エムズ歯科クリニック 学術就任