睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群 (SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndromes)とは、睡眠中に低呼吸・無呼吸状態に陥る状態で、睡眠関連呼吸障害に含まれる病態の一種です。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(central sleep apnea syndromes)と閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (obstructive sleep apnea syndromes) が存在します。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が全体の割合として多く、歯科医院での治療の対象にもなります。


閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の身体への影響・原因

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは、睡眠中に上気道の閉塞により低呼吸・無呼吸状態となり、体内の酸素濃度が低下する状態です。睡眠時の低呼吸・無呼吸状態が続くとその都度脳が覚醒し睡眠が妨げられ、質のよい睡眠を得られないことから日中の強い眠気や疲労感、集中力の欠如が起こります。

人体は呼吸により酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することでガス交換を行っています。夜間の低呼吸・無呼吸状態によるガス交換の異常や脳の覚醒によるストレスは、多くの臓器に悪影響をもたらします。特に心臓への影響は大きく、高血圧症や虚血性心疾患、糖尿病などさまざまな生活習慣病の原因となります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は上気道の閉鎖によって引き起こされます。上気道の閉鎖は主に下記のことが原因で引き起こされます。

・加齢 加齢に伴う筋肉の低下により上気道や舌周囲の筋肉量が低下します。
・肥満 上気道周囲への脂肪の沈着により気道閉塞を促します。
・骨格 現代人の小さく、後退した顎は気道を閉塞します。
・扁桃腺 扁桃腺肥大は上気道の空間を圧迫し、空気の通り道を圧迫します。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは、睡眠中に上気道の閉塞により低呼吸・無呼吸状態となり、体内の酸素濃度が低下する状態です


医科介入と歯科介入の違い

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は次のような診断基準があります。

睡眠1時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数を合計したものを無呼吸低呼吸指数(AHI: apnea hypopnea index)と定義します。1時間あたりAHI>15を満たす場合、もしくは1時間あたりAHI>5かつ眠気や疲労感などの症状の自覚がある場合、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と診断されます。

日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン
http://fa.jrs.or.jp/guidelines/guidelines_sas2020.pdf

日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断までの流れ

また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は無呼吸低呼吸指数(AHI)により重症度分類されます。

歯科医院では比較的軽度な場合単独での治療を行い、重度な場合は医科と連携して改善を図ることがあります。


歯科医院で可能な治療法

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療方法は、生活指導、OA(オーラルアプライアンス)、CPAP、外科の4つがあります。その程度により対応は異なりますが、歯科医院で可能な治療方法としては生活指導とオーラルアプライアンスがあります。

・生活指導

偏った食生活は肥満へ繋がり、肥満は閉塞性無呼吸症候群(OSAS)の代表的な原因となります。

特に肥満気味の方は管理栄養士と連携を図り、今一度自身の食生活を見直して気道周囲の脂肪の量を減らしていくことが根本の原因解決へとつながります。

・OA(オーラルアプライアンス)

睡眠時に下顎をやや前方に位置させた状態で固定する専用のマウスピースを作成し、上気道を拡大させる方法です。上下の歯の型をとり、必要に応じてCT上で気道の状態を評価して位置を決定します。OAは全員に適応するわけではありません。

重度の場合は対応できないこともあります。

※対応できない方 重度の歯ぎしり、矯正中、無歯顎、多数歯欠損、重度歯周病の方

専用のマウスピース



著者経歴

浅井 瞭汰

浅井瞭汰

  • 2018年 東京医科歯科大学 歯学部 歯学科 卒業
  • 2019年 エムズ歯科クリニック 入社
  • 2022年 エムズ総合歯科クリニック東中野 院長

[主な所属・役職]

  • 日本歯周病学会会員
  • 日本口腔インプラント学会会員