歯周病の進行

歯周病の進行

歯磨き不足などで歯肉の周りに磨き残しによる歯垢=バイオフィルムが溜まります。歯周病の原因である歯垢=バイオフィルムは細菌の集団とも言われ、口の中には700種類を超える細菌がいるといわれています。このバイオフィルムはマトリックスと言われる膜に覆われています。ですので、うがい薬(洗口剤)を使用するだけでは細菌には効きにくいのです。歯磨きや歯科医院での専用の器具を用いたクリーニングによって、このバイオフィルムを取り除く事が重要となります。歯周病を予防していくためには、まず患者さん自身で行うセルフケアにおいて1日の歯磨きの適正な回数、正しい歯磨きの方法を行うことがとても重要であり、それと共に歯科医院での専用の器具を用いたクリーニングを行い、歯科医師・歯科衛生士による定期的なチェックを受けることが大切です。

このバイオフィルムの除去が十分に行えないと、歯肉への感染が進行し、歯肉の腫れ、赤み、そして出血の炎症所見を認め、歯肉炎となります。

歯周病の原因である歯垢=バイオフィルム

歯肉炎

そしてこの歯肉炎が進行していくと、歯周炎となります。

この段階はまだ歯肉のみの炎症ですので、図を比較すると歯肉の炎症による赤みが少し見られる程度です。

細菌が歯周ポケットの中に進んでいくと、歯磨きで十分に汚れを落とす事が出来なくなります。そうなりますと、歯周ポケットの中で歯垢が増え、歯石となり溜まり、細菌が増え歯周ポケットの中で炎症が拡がっていきます。さらに進行すると、歯と歯槽骨を固定している歯根膜の維持力が弱くなり、歯を支えている歯槽骨の吸収を起こしていきます。この歯周炎の状態で、病状が更に進行していくと、歯を支えている歯槽骨が大きく破壊・吸収され歯が揺れてきます。歯肉は大きく腫れ、膿が出て歯磨きをすること、咬むことも難しくなり、最終的には歯を抜かなければならなくなります。

細菌が歯周ポケットの中に進んでいく

歯槽骨の吸収
非常に重度に歯周病が進行した状態

最後の図の状態は、非常に重度に歯周病が進行した状態です。

歯周病の検査方法は、Probing Depth(歯周ポケットの深さの検査):プローブという目盛りのついたものを歯と歯茎の境目に入れ、歯周ポケットの深さを検査します。BOP(Bleeding On Probing):プローブを入れた後引き抜いた際に、そこの歯茎から出血があるかどうかを見る検査。炎症の指標ともなるものです。Mobility(動揺度):歯が、動くか動かないか、動く場合はどの方向にどの程度動くかを検査するものです。PCR(Plapue Control Record):各種のチャートを用いて、細菌性プラークの付着状態を記入する検査。どこに細菌の付着を認め、また磨き残しの部位を客観的に見るためのものです。以上の歯周病検査と共に、口腔内の現在の状態、治療箇所について診査をする口腔内写真検査、骨の形態や歯肉の中にある歯石、また歯根の膿、顎関節の形態を診査するエックス線写真検査、その他咬み合わせなどを診査する模型診査など患者さんの症状によってさまざまです。こういった検査結果を基に、歯周病治療の計画が立案されます。

プローブ

Probing Depth(歯周ポケットの深さの検査)



著者経歴

片山 翔一

片山翔一

  • 2006年3月 神奈川歯科大学歯学部卒業、歯科医師免許取得
  • 2006年4月 神奈川歯科大学附属病院総合診療科 臨床研修歯科医
  • 2007年4月 医療法人社団翔舞会エムズ歯科クリニック 入社
  • 2017年4月 神奈川歯科大学附属横浜クリニック 成人歯科・歯周療法部門 在籍

[主な所属・役職]

  • 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
  • 日本歯周病学会認定医 第1465号
  • 日本口腔インプラント学会専修医 第1429号
  • 神奈川歯科大学附属横浜クリニック 成人歯科・歯周療法部門 臨床専攻生
  • 京都インプラント研究所 所員
  • 日本歯周病学会 会員
  • 日本口腔インプラント学会 会員