歯周病の治療法

歯周病の治療法

歯肉炎の状態であれば、きちんとした歯磨きの仕方と回数を実行し、歯科医院でのクリーニングをする事で健康な状態に戻すことが出来ます。

歯周炎の状態になった場合は、初期治療としてスケーリング正しい歯磨きの方法を実行し、その後歯肉の状態を評価し、歯肉の歯周ポケットの中に専用の器具を入れ、歯周ポケットの中から歯石と感染物を除去するSRP(スケーリング・ルートプレーニング)という処置を行います。

軽度〜中程度レベルの歯周炎であれば、ここで改善が見られますが、中程度以上の歯周炎の場合は、その後に歯周外科処置を行うことが多いです。なぜなら、歯周ポケットが5mm以上ある部位にSRPを行っても多くの歯石の取り残しがあるという報告があるため、深い歯周ポケットを有する患者さんに対しては歯周外科処置を行います。歯周外科処置で一般的な術式は歯肉剥離掻爬術です。痛く無いように麻酔(局所麻酔)をした後、歯肉をメスで切り(切開)、切った歯肉を骨から剥がし(剥離)、歯の根に付着した歯石、歯槽骨の形態などが直接見える状態で、歯石や感染物の除去を行います。その際必要であれば、その後に患者さん自身で清掃がしやすいように骨の形態を整える歯槽骨整形も行います。最後に切った部分を縫って(縫合)処置を終わります。

SRP(スケーリング・ルートプレーニング) 01

SRP(スケーリング・ルートプレーニング) 02
歯肉剥離掻爬術 01

歯肉剥離掻爬術 02

ただし、この歯周外科処置に関しては全身の病気をもっている患者さんの場合は医科への対診が必要になることがあります。特に糖尿病患者さんではHbA1cが6.9%以下でないと、きちんとした結果が出づらいと言われています。また、抗凝固薬服用患者さんやその他の全身の病気をもっている患者さんについても状態によっては歯周外科処置を行うことが難しい場合もあります。これは喫煙をしている患者さんも同じです。喫煙をしている患者さんに歯周組織再生療法を行った場合、非喫煙患者さんと比べて組織再生量が大幅に少なくなるという報告が示されているからです。
※Reynolds MA, Kao RT, Camargo PM, Caton JG, Clem DS, Fiorellini JP, Geisinger ML, Mills MP, Nares S, Nevins ML.Periodontal regeneration-intrabony defects : a consensus report from the AAP Regeneration Workshop. J Periodontol 2015;86(2 Suppl):S105-107.

それぞれの処置後には再評価を行い、歯肉の中にある歯垢を取り除く(歯肉縁上・縁下のプラークコントロール)SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)へ移行し、歯科医師・歯科衛生士による定期的な管理の上で、歯肉の健康な状態を維持していきます。なぜこのように処置後も継続して歯肉の状態を管理するかといいますと、歯の表面に付着したバイオフィルムと歯肉炎の因果関係が1965年にLoeらによって証明されたこと、プラークが歯周組織の破壊をもたらす事も1975年にLindheらの実験により証明されたこと、SPTにより長期にわたり歯周病と虫歯が抑制出来る事が2004年Lindheらにより30年間の長期研究におけるSPTの有効性が示されたことなどが関係しています。以上により、きちんと処置後のSPTを行い、バイオフィルムの除去を定期的に行うことが重要となります。

材料

歯周病により失われた組織を再生するために、歯周組織再生療法という方法があります。それぞれの治療方法において使用する材料が異なります。GTR法、エムドゲインを使用する方法、リグロスを使用する方法です。まずGTR(Guided Tissue Regeneration)法とは、バリア膜(非吸収性膜は四フッ化エチレン樹脂(e-PTFE)、吸収性膜は合成高分子系(ポリ乳酸、グリコール酸など)と動物性由来の牛コラーゲン系のもの)を使用します。

エムドゲインは、エナメルマトリックスという幼若豚の歯胚組織から抽出したタンパク質であり、これを歯周治療に応用する事で歯が発生する時と同じ環境を作り出し、歯周組織を再生出来る薬剤と言われ、スウェーデンで開発され製品化されています。
※ストローマンホームページより引用:エムドゲインによる歯周組織再生治療 ストローマンパートナーズ (straumannpartners.jp)

リグロスは、成長因子と言われる遺伝子組み換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibro-blast growth factor:FGF-2、bFGF)を使用します。

再生療法

歯周組織再生療法といい、先に記しました通り、GTR法、エムドゲインを使用した方法、リグロスを使用した方法といくつかあります。GTR(Guided Tissue Regeneration)法とは、歯周外科処置と同様に歯肉をメスで切り(切開)、切った歯肉を骨から剥がし(剥離)、歯の根に付着した歯石、歯槽骨の形態などが直接見える状態で、歯石や感染物の除去を行います。その後、骨が吸収して失われた部分にこのバリア膜で覆い縫って(縫合)処置を終わります。バリア膜で覆うことで、歯肉などの軟組織が骨の中へ直接入り込むことを防ぎ、新しい血管が新生され、歯周組織の再生を促します。治療後およそ6ヶ月待ちます。

エムドゲインは、エナメルマトリックスという幼若豚の歯の組織から抽出したタンパク質です。これも歯周外科処置と同様に進め、歯石や感染物の除去を行い歯根面を徹底的に綺麗に清掃した後、リン酸などで歯根を処理し、歯根面へエムドゲインを塗布し縫って(縫合)処置を終わります。
エムドゲインを使用した治療法は、2002年に厚生労働省の認可を受け、世界約40か国で20年以上、200万人以上の患者さんに対する治療実績があり、副作用の報告も少なく比較的高い安全性が実証されている治療法です。

エムドゲインを使用した治療法 01

エムドゲインを使用した治療法 02

エムドゲインを使用した治療法 03

エムドゲインを使用した治療法 04

リグロスは、成長因子と言われる遺伝子組み換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibro-blast growth factor:FGF-2、bFGF)を使用します。こちらも歯周外科処置と同様に進め、歯石や感染物の除去を行い、歯根面を徹底的に綺麗に清掃した後、骨が吸収して失われた欠損部にリグロスを塗布し満たした後、縫って(縫合)処置を終わります。リグロスを塗布した骨欠損部は、その後、血のかたまり(血餅)で満たされ、その中に血管の新生が行われ、そこに新しく組織になる細胞が集まり増えていきます。それぞれの細胞は分化していき、歯根のセメント質、歯槽骨、歯根膜が新生し、歯周組織が再生する、という過程を経ていきます。

リグロスを使用する歯周病治療 01

※科研製薬株式会社 リグロスを使用する歯周病治療を受ける患者さんへ、より抜粋。

リグロスを使用する歯周病治療 02

リグロスを使用する歯周病治療 03
リグロスを使用する歯周病治療 04
リグロスを使用する歯周病治療 05


著者経歴

片山 翔一

片山翔一

  • 2006年3月 神奈川歯科大学歯学部卒業、歯科医師免許取得
  • 2006年4月 神奈川歯科大学附属病院総合診療科 臨床研修歯科医
  • 2007年4月 医療法人社団翔舞会エムズ歯科クリニック 入社
  • 2017年4月 神奈川歯科大学附属横浜クリニック 成人歯科・歯周療法部門 在籍

[主な所属・役職]

  • 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
  • 日本歯周病学会認定医 第1465号
  • 日本口腔インプラント学会専修医 第1429号
  • 神奈川歯科大学附属横浜クリニック 成人歯科・歯周療法部門 臨床専攻生
  • 京都インプラント研究所 所員
  • 日本歯周病学会 会員
  • 日本口腔インプラント学会 会員