顎関節症
顎の関節とありますが、ややこしいことに、顎の関節に関連するところの症状は全て顎関節症となります。つまり、顎の関節(骨の形や、内部構造)や、その周囲にある腱や靱帯、関節を動かす筋肉、の異常は、すべて顎関節症に含まれます。
顎関節症の原因
下顎をぶつけるなどの、外傷や、頬杖やうつぶせ寝などの、弱い力だが、長期にわたって顎を押す力、顎の負担になるようなかみ合わせなどが、原因となると言われています。
顎関節症の治療
顎関節症の、主な症状は3つで、
①顎が開かない
②顎から音がする
③顎が痛い
です。
しかし、基本的に、②の顎から音がするだけの場合は、とくに健康に悪影響があるわけでもないため、基本的に経過観察となります。
③の顎の痛みは、時間の経過と共に自然と消えていくことが多いため、一時的な痛みの場合、積極的に治療をせず、痛み止めを飲んでもらって経過を見るだけで十分のことも多いです。しかし、一度痛みが引いても頻発する場合は、マウスピースを入れて顎を安静にする、というものが多いです。しかし、①の顎が開かない場合、それが食事が取れないほどしか開かなくなる場合は、積極的な治療が必要になります。主な治療は、マウスピースを入れて顎を安静にする、というものが多いです。
顎関節症と咬合
マウスピースをいれて顎を安静にする、と書きましたが、なぜ、マウスピースを入れておくと、良いのでしょうか。それは、歯には凹凸があり、上下の歯をかみ合わせると、その凹凸が互いに嵌まり込む位置で止まるから、です。通常、咬む位置というのは、歯によって決まるということです。先に書いた咬頭嵌合位、と言うものです。しかし、咬むというのは、顎の関節や筋肉も関わっています。
関節や筋肉がリラックスした状態の顎の位置を、中心位、と言います。 この咬頭嵌合位と中心位がずれているとき、どちらが優先されるか、もっと言えば、上下の歯がかみ合うことと、顎の関節や筋肉が安静を保つこと、どっちが優先されるか?これは、咬むことは、食べることであり、それは生命維持に関わることであり、その前では、顎の関節や筋肉が安静を保てることは、後回しになります。つまり、顎の関節や筋肉に負担がかかったとしても、無理矢理にでも咀嚼をする事になります。
ここで、マウスピースをいれると、マウスピース上で、中心位になるようにすると、顎や、その筋肉に負荷がかかりにくくなり、症状が取れてきます。
図説
顎関節をリラックスさせる目的のマウスピース。 まず、顎の関節は楽な位置関係になっている。
上の歯にぴったりはまる、プラチチック製で、その表面は平面(フラット)になっている。
(右の図で、上下の歯に挟まっているのグレーの部分)
下の歯は、その平面に、歯の凸部だけで接触し、嵌まり込まなくなる。
ただ、マウスピースは入れている間しか効果がありません。しかし、一生入れておく訳にもいかないし、食事や、会話時も入れてられません。(食べられないし、しゃべりにくい)外すとすぐに症状が出てしまうような場合は、根本的になんとかしたい場合は、かみ合わせの治療を行う必要が出てきます。
著者経歴
佐藤優樹
- 2003 年 鶴見大学歯学部卒業
- 2006 年 エムズ歯科クリニック勤務
[主な所属・役職]
- 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
- ICOI(International Congress of Oral Implantologists)指導医
- 日本顎咬合学会会員
- 日本口腔インプラント学会会員
- 日本歯周病学会会員