かみ合わせはなぜ重要なのか

顎の発育

顎の発育

歯は上下の顎の骨に埋まっています。そして、きちんと、上下の歯がかみ合う、ということは、上下の歯の位置が、それぞれ、顎の骨のおよそ真ん中、つまり良い位置に埋まっていて、埋まっている方向も良い、と言うことです。しかし、その上下の顎の位置関係がずれていると、顎ごと上下の歯はずれてしまい、ちゃんとかみ合いません。だから、かみ合わせにとって、顎がちゃんと発育しているか?ということは、大事な要素となります。


正しい舌の位置

顎の発育にとって、舌の位置は、非常に重要です。顎の発育は、舌によって決まります。正確に言えば、「いつもの」舌の位置が重要です。それは、姿勢のようなものです。例えば、良い姿勢というのは、基本猫背だけど、たまに背伸びをすれば良い、と言うものではなく、常に、よい姿勢を保っていることが大事です。舌も、あるときに良い位置にあれば良い、と言うものではなく、常に、良い位置にあることが、顎の正常な発育を起こします。

正しい舌の位置

何もしていないとき、嚥下時(飲み込むときのこと)に、舌の先端が上顎の切歯乳頭という位置にあるのが正常です。一日約600回行うといわれている、嚥下時の舌の圧力が、上顎を前方に押すことで、上顎骨は正しく前方に発育します。その前方に発育した上顎に対して、下顎を合わせる、つまり前に出して咬むことで、下顎も後追いで成長します。逆に、舌が、いつも下顎の歯列に沈んでいるような場合は、上顎の成長が止まり、下顎だけ発育してしまうので、受け口になっていきます。


正しい呼吸法

息をするのに、鼻と口がありますが、どちらが正しいか知っていますか?答えは、鼻、です。

正しい呼吸法は鼻で行う

鼻から吸うことで、鼻毛、鼻水、などで外気を肺に入れるまでに、汚れやホコリ、細菌、ウイルスを吸着し、肺にはなるべくきれいな空気にしてからいれる、といったフィルターのような機能があります。口から息を吸えば、その汚れはフィルター無しで、すぐに喉や気道に到達し、肺まで入っていきます。こうなると、風邪を引きやすくなったり、喘息のリスクも上がると言われています。

鼻から息を吸うと、その空気は副鼻腔という顔の中にある小部屋のようなところで、加温加湿され、喉、気道、肺にやさしい温度や湿度になります。しかも、鼻粘膜からは、一酸化窒素(NO)ガスがでており、これは肺の血流を増加させることで、呼吸の意味である酸素を体に取り込む、という機能を助けています。口呼吸の子供と、鼻呼吸の子供の持続的な運動能力を測った実験では、鼻呼吸の子供のほうが成績が良かったと言われています。


呼吸法に伴う疾患

先に、口呼吸は、風邪を引きやすく、喘息になりやすい、と書きましたが、それだけではありません。

いくつか、解説します。

アデノイド顔貌

アデノイドとは、喉の付け根にある扁桃という組織が、肥大したものです。扁桃という組織は、免疫を担当しているところです。通常、鼻呼吸なら、鼻のフィルター機能できれいになった空気が通るはずのところが、口呼吸によって汚いままの外気が通過すると、免疫を発揮しようと頑張りすぎて、肥大してきます。すると、気道が狭くなり、鼻呼吸だけでは息がしづらくなって、口を開けて呼吸をするようになり、するとまたアデノイド肥大が悪化し・・・と悪循環に陥っていきます。特徴として、口がいつも半開きで、口唇が突出し、下顎が小さく首の境目がはっきりしない、頬の下が膨らみ、顔がまるくなる、「疲れているような顔」と表現されることもあります。 口が開いた状態が長く続くので、口腔内が乾燥して口臭の原因になることがあります。

アデノイド顔貌

腎疾患(IgA腎症)

口呼吸をしていると、腎臓病になる?と、聞くと不思議に思うと思いますが、口呼吸をすることで、鼻のフィルター機能が働かず、汚れた外気が直接気道に入り込むことで、扁桃腺が慢性炎症をおこします。すると、扁桃腺は外敵と戦おうとして、免疫物質を作り出します。その中に、IgA(免疫グロブリンA)と言うものがあります。IgAは、眼・鼻・喉や消化管などの外界と接する粘膜組織によく見られるものです。扁桃腺の慢性炎症などで異常なIgAが作られて、それが最終的に腎臓に蓄積し、腎臓に炎症が起きるのがIgA腎症です。放置すると、人工透析が必要になったり、寿命を損なうともいわれている、国が指定難病にしている病気です。鼻呼吸ができないと言うことが、そもそもの引き金の一つになっている、と言うことです。

腎疾患(IgA腎症)

おねしょ(夜尿症)

おねしょ(夜尿症と言います)の主な原因は、

1. 寝ている間に、膀胱にたまっていく尿量が多い
2. 膀胱の機能が未熟で、尿がためられない
3. 尿が膀胱にたまっても、目が覚めない

といわれています。

おねしょ(夜尿症)

この中で、①が、口呼吸に関連しています。口呼吸をしていると、おねしょしやすい、と言うことです。 例えば、鼻アレルギーやアデノイドがあって、鼻呼吸ができない原因がある場合、耳鼻咽喉科を受診して問題が解決すると、おねしょがなくなるとがあります。なぜ口呼吸がおねしょの原因になるかというと、肺での酸素の取り込みが不足し、体が酸素不足になります。 するとめ、心臓を頻繁に動かして血液の循環量を増やして酸素をなんとか体に送ることになります。すると血管に負担がかかるため、こんどは体が血管の負担を減らそうとして水分を、腎臓から膀胱へ尿として排泄させようとし、夜間の尿量が増えてしまうということです。



著者経歴

佐藤優樹

佐藤優樹

  • 2003 年 鶴見大学歯学部卒業
  • 2006 年 エムズ歯科クリニック勤務

[主な所属・役職]

  • 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
  • ICOI(International Congress of Oral Implantologists)指導医
  • 日本顎咬合学会会員
  • 日本口腔インプラント学会会員
  • 日本歯周病学会会員