入れ歯の治療について
入れ歯の基礎知識
入れ歯とは
入れ歯(義歯)とは、失われた歯を人工的に補う取り外し可能な装置です。歯科医学では「義歯」と呼ばれ、患者さまの生活の質(QOL:Quality of Life)を支える治療選択肢の一つです。
なお、より自然な噛み心地を求める場合には、インプラント治療という選択肢もあります。詳しくはインプラントのページをご覧ください。
入れ歯の種類
入れ歯は、残っている歯の状況に応じて大きく2種類に分けられます。
| 部分入れ歯(部分床義歯) | :一部の歯を失った場合に使用する入れ歯です。残っている健康な歯にクラスプ(バネのような留め具)をかけて固定します。 |
|---|---|
| 総入れ歯(全部床義歯) | :上顎または下顎のすべての歯を失った場合に使用する入れ歯です。歯ぐきや顎の骨に吸着させて安定を図ります。 |
入れ歯と健康の関係
入れ歯は見た目を整えるだけでなく、食事の際の「噛む力」の回復を支えます。適切に作製された入れ歯による咀嚼機能の改善は、栄養バランスの良い食事の摂取につながり、全身の健康維持に役立つと報告されています(日本補綴歯科学会)。
また、厚生労働省の調査では、入れ歯を使用している方の一定割合が「日常生活における満足度が向上した」という趣旨の回答をしており、お口の健康が生活の質(QOL)と関わりの深いことがうかがえます。
出典1:日本補綴歯科学会「臨床アウトカムとしての咀嚼機能評価の重要性」等
出典2:厚生労働省「平成23年 歯科疾患実態調査」等(項目:咀嚼状況と満足度より)
入れ歯治療への当院の考え方
私の経験上、入れ歯は完成された治療分野で、30年ほど前から治療法や材料に大きな変化がなく、保険のルールもほとんど変わっていません。そのためか、入れ歯を得意とする歯科医師や歯科技工士は年々減っているように感じています。とはいえ、入れ歯治療がよくないということではありません。インプラントやジルコニアなど、さまざまな治療法や材料が登場したことで、それらと入れ歯を併用するなど、入れ歯の在り方が変わってきていると感じています。当院では、こうした選択肢も踏まえ、患者さまに合った方法をご提案します。
エムズ歯科クリニックの入れ歯治療
当院の取り組み
デジタル技術を活用した精密な入れ歯作製
| デジタルスキャナーによる型取り | :従来の粘土のような材料を使った型取りに代わり、光学印象による型取りが可能です。患者さまの負担の軽減につながり、精度の高い入れ歯作製を目指せます。 |
|---|---|
| 3Dプリンター技術の活用 | :3Dプリンター技術により、コピー義歯の作製を効率的に行えます。現在お使いの入れ歯に満足されている場合、同様の形状・機能を持つ予備の入れ歯を短い期間で作製できる場合があります。 |
個人的には、従来の作り方でも十分に良い入れ歯ができると考えていますが、より簡単に、より精度が高く、より費用を抑えて作れるのであれば、新しい作り方に変わっていくこともあると思います。3Dプリンターを使ったデジタル義歯は実用化の一歩手前まで来ており、近い将来、これまで以上に快適な入れ歯を作れるようになることを期待しています。
包括的なお口の管理
| インプラントとの併用治療 | :当院ではインプラント治療も行っているため、必要に応じてインプラントを支えとした入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)の作製も可能です。この方法により、入れ歯の安定性と咀嚼機能の向上が期待できます。 |
|---|---|
| 矯正治療との連携 | :残っている歯の位置や傾きが入れ歯の安定性に影響する場合、矯正治療で歯の位置を整えてから入れ歯を作製することもあります。こうした包括的なアプローチにより、噛み合わせと機能性の向上を目指します。 |
治療について知っておきたいこと
治療の流れ
- 1
初回診察・検査
お口の中の状況を詳しく診査し、レントゲン撮影や噛み合わせの検査を行います。患者さまのご希望やライフスタイルを伺い、治療計画を立てます。
- 2
精密な型取り・噛み合わせの記録
デジタルスキャナーまたは従来の印象材を用いて型取りを行い、適切な噛み合わせの高さや位置を丁寧に決めます。
- 3
試適・調整
完成前の段階で仮の入れ歯を装着し、噛み合わせや適合を確認します。必要に応じて修正し、患者さまに合った状態へ調整します。
- 4
完成・装着
最終的な入れ歯を装着し、使用方法やお手入れの方法を詳しくご説明します。
- 5
定期的なメンテナンス
入れ歯の調整やお口の健康管理のため、定期的なご来院をおすすめしています。
保険の入れ歯のメリット・デメリット
保険適用の入れ歯には、次のような特徴があります。
メリット
- 取り外して清掃しやすい
- 手術を必要としない(インプラントとの併用を除く)
- 短い期間で作製できる場合がある
- 費用の負担を抑えやすい
- 周囲の歯への負担が少ない
デメリット
- 装着に慣れが必要な場合がある
- 固定式の治療と比べて咀嚼力に制限がある場合がある
- 定期的な調整が必要
- 発音に影響が出る場合がある
新しい入れ歯を使い始めるときについて
これまで多くの入れ歯を作ってきましたが、新しく作った入れ歯を最初からすんなり使える方はごくまれです。作製後には数回の調整が必要になるのが一般的です。前の入れ歯を作ってから年数が経っている場合、お口の中や顎の骨、歯ぐきの状態も変化しているため、以前とまったく同じ形に作っても安定しないことがあります。また、新しいものに慣れる力も年齢とともに変化するため、慣れるまで時間がかかることもあります。ただ、これからはデジタルの力を借りて、今までの入れ歯の形に近いまま新しい入れ歯を作ることも可能になりつつあり、作り直すときの違和感をやわらげられる可能性があります。当院では装着後の調整を丁寧に行い、快適にお使いいただけるよう継続的にサポートします。
費用について
費用は治療内容やお口の状況により変わります。詳細は診察時にご説明します。
保険診療(3割負担の場合の目安)
| 部分入れ歯 | 約5,000円〜15,000円 |
|---|---|
| 総入れ歯 | 約10,000円〜20,000円 |
自費診療(税込)
自費の入れ歯は、素材によって費用・治療期間・主なリスクが異なります。
コバルトクロム床義歯
| 費用 | 533,000〜593,000円 |
|---|---|
| 治療期間・回数 | 約1〜2ヶ月、4〜6回程度 |
| 主なリスク・副作用 | 装着直後は違和感や痛みが生じることがあり、調整が必要になる場合があります。金属を使用するため、金属アレルギーのリスクがあります。 |
チタン床義歯
| 費用 | 714,000〜787,000円 |
|---|---|
| 治療期間・回数 | 約1〜2ヶ月、4〜6回程度 |
| 主なリスク・副作用 | 装着直後は違和感や痛みが生じることがあり、調整が必要になる場合があります。破損した場合、修理に時間を要することがあります。 |
よくあるご質問
一般的には、初回診察から完成まで1〜2ヶ月程度の期間がかかります。ただし、お口の状況や選択する治療方法により期間は変わります。デジタル技術を活用することで、効率的な作製が期待できる場合があります。
お口の状態によって個人差がありますが、多くの方が2週間〜1ヶ月程度で新しい入れ歯の感触や発音に慣れてくると報告されています(日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン』、および新製義歯の順応に関する臨床研究報告に基づく)。入れ歯は「義足」や「義手」と同じように、慣らしていくことが大切な道具です。最初は違和感があるかもしれませんが、装着と調整を繰り返すことで、徐々に馴染んでいくことが期待できます。
食後は入れ歯を外して水で洗浄し、専用のブラシで清掃することをおすすめします。夜間は入れ歯用洗浄剤を使ったお手入れが効果的です。詳しいお手入れ方法は、装着時に詳しくご説明します。
時間の経過とともに、顎の骨や歯ぐきの形が変化することがあります。そのため、定期的な検診と必要に応じた調整が大切です。当院では、長期的なお口の健康管理をサポートします。
入れ歯は取り外して清掃しやすく、手術を必要としないという特徴があります。一方、インプラント治療と比べると咀嚼力に制限がある場合があります。患者さまの状況に応じて、適した治療選択肢をご提案します。
まとめ
参考文献
日本補綴歯科学会「臨床アウトカムとしての咀嚼機能評価の重要性」等
厚生労働省「平成23年 歯科疾患実態調査」等
日本補綴歯科学会『有床義歯補綴診療のガイドライン』
