不正咬合とは
アングル分類
かみ合わせを、上下の歯の前後的な位置で、分類したものが、アングル分類です。
Ⅰ級
上下の歯の位置が理想的で、良いかみ合わせになっている
Ⅱ級
上の歯に対して、下の歯が後ろに引っ込んでいる
Ⅲ級
上の歯に対して、下の歯が前に出ている
オープンバイト、ディープバイト
かみ合わせを、上下的な位置関係で分類したものが、オープンバイト、ディープバイトと言います。
オープンバイト
ディープバイト
叢生、空隙歯列弓
すきっぱを空隙歯列弓、ちゃんと、歯が収まらず、ガタガタになっているのを、叢生、と言います。
叢生
空隙歯列弓
個性正常咬合
正常な歯並びについて、先に書きましたが、現実的に考えると、理想的な正常咬合の人のほうが珍しいくらいです。(半数以下です)そんな中で、不正咬合の人は、全員、矯正治療によって正常咬合を目指さなければならないのでしょうか?顎の発育状況や、歯の形や大きさは、全ての人々で全く同じということはあり得ません。そのため、一概に正常な歯並びや噛み合わせを定義して、それを目指して矯正歯科治療をするのはナンセンスと言えます。大事なことは、歯や口、そして全身の健康のために、歯並びを今より良くする、ということが重要なことであり、全ての患者さんを、ただひとつの理想的な状態にするというのは、意味がありません。
そこで、矯正歯科治療が目指す歯並びが、個性正常咬合です。簡単に言えば、理想とするかみ合わせを目指し、より正解に近づくことで、口の持つ機能を最大限ひきだせる咬合(だから、患者様一人一人によって、ずいぶん違います)と言うことです。
咬合位
読んでいる方に、一つやって頂きたいことがあります。
まず、そっと咬んでください。そして、その位置を覚えておいてください。
次ぎに、強く上を向いて咬んでください。多くの人が、奥歯のほうが強くあたるようになります。
次ぎに、強く下を向いて咬んでください。多くの人が、前歯のほうが強くあたるようになります。
次ぎに、強く右を向いて咬んでください。多くの人が、上下の歯が左右にずれた状態で咬むと思います。
咬頭嵌合位
上下の歯には凸凹があります。そのため、かみ合わせると、その凹凸が互いに嵌まり込むように、安定する位置があります。これを、咬頭嵌合位と言います。いま、ぐっと噛みしめてみてください。やって頂けた方は、それが咬頭咬合位です。
しかし、図のように、歯がかみ合ったときに、顎の関節に負担がかからない状態であれば良いのですが、
このように、歯をかみ合わせたら、顎の関節がずれてしまう人がいます。
そしてのこの方は顎の関節がラクな位置で咬むと、このようになります。顎関節はラクですが、歯の凸凹がかみ合っていないので、まともに、ものを咬めません。よって、顎に負担をかければギリギリ咬める、という状況であれば、人間は顎の関節よりも、「ちゃんと咬む」ことを優先して、食物を咀嚼してしまいます。結果、顎の関節には、負荷がかかり、人によっては顎関節症になる可能性が出てきます。
中心位
これは、左右の顎の関節にも余計な負荷がかからずに、そして顎を閉じる筋肉もリラックスした状態で、正しいかみ合わせの高さで、咬んだときのかみ合わせのことです。
先ほど説明した、このかみ合わせの位置を中心位、といいます。
咬頭嵌合位は、歯がないと決まりません。それでは、歯が1本もない場合、かみ合わせは、どのように決めるのでしょうか?歯が1本だけある場合は?右上に4本、左下に4本、合計8本だけあるけど、かんでもお互いに当たらない場合は?下は1本も抜けていないけど、上は全部の歯を失っている場合は?すべて、「はい、咬んでください」、と歯科医師が言っても、患者さんは「上下の歯が当たらないから、咬めないんだけど・・・」となってしまいます。しかし、歯科医師は、かみ合わせをとらないと、かぶせ物も入れ歯も、何も作れません。
そこで出てくるのが、中心位です。中心位は、歯がなくても決まります。顎や筋肉がリラックスした状態で、顎をそっと閉じてくれば良いからです。
ここから転じて、上下にたくさん歯があるけど、そのかみ合わせ(先に書いた、咬頭嵌合位や習慣性咬合位)が異常で、顎や顎を動かす筋肉に負担がかかったり、かぶせ物などが長持ちしなくなったり、歯を失ったりする方がいます。
そのような場合も、上下の歯はあるけど、中心位でかみ合わせを再構成することがあります。
著者経歴
佐藤優樹
- 2003 年 鶴見大学歯学部卒業
- 2006 年 エムズ歯科クリニック勤務
[主な所属・役職]
- 厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医
- ICOI(International Congress of Oral Implantologists)指導医
- 日本顎咬合学会会員
- 日本口腔インプラント学会会員
- 日本歯周病学会会員