口内炎の治療について
口内炎の基礎知識
口内炎とは
口内炎は、お口の中の粘膜に起こる炎症です。頬の内側、舌、歯ぐき、唇の裏側など、さまざまな場所にできます。小さな白っぽい潰瘍(かいよう=粘膜の表面がえぐれた状態)が代表的で、触れると痛みを感じます。
食事のときや歯磨きのときに痛み、日常生活に支障が出ることもあるため、早めの対処が望まれます。
口内炎ができる原因
口内炎の原因は一つではありません。複数の要因が関係して発症します。
| 物理的な刺激 | :誤って頬の内側を噛んでしまう、硬い食べ物で粘膜を傷つける、入れ歯や矯正装置が当たる、歯の詰め物の縁が鋭利になっているなど。 |
|---|---|
| 体調の変化 | :疲労が蓄積している、睡眠不足が続く、ストレスを感じている、栄養バランスが偏っている(特にビタミンB群の不足)など。 |
| 免疫力の低下 | :風邪を引いた後、体調を崩しやすい時期、季節の変わり目など。 |
私の経験上、口内炎ができやすい方には、忙しくて食事が不規則になっている、疲れが溜まっているといった共通点が見られることが多い印象です。体が疲れているサインとして口内炎が現れることもあるため、生活習慣を見直すきっかけにしていただければと思います。また、食事中に誤って唇や舌を傷つけた場合、そこが口内炎と似た炎症になることがあります。その場合も処置は同様ですので、痛みがつらいときはご来院ください。
口内炎の種類
| アフタ性口内炎(一般的なタイプ) | :円形や楕円形の白っぽい潰瘍ができます。周りが赤く縁取られているのが特徴です。原因がはっきりしないことも多く、疲れやストレスと関係すると考えられています。 |
|---|---|
| カタル性口内炎 | :粘膜が赤く腫れて、ヒリヒリとした痛みがあります。入れ歯や詰め物の刺激、やけどなどが原因です。 |
| ヘルペス性口内炎 | :ウイルス感染によって起こります。小さな水ぶくれが複数でき、破れると痛みが強くなります。 |
| カンジダ性口内炎 | :カビの一種であるカンジダ菌が原因です。白いコケのようなものが粘膜に付着します。免疫力が落ちているときに起こりやすくなります。 |
注意が必要な口内炎
通常の口内炎は2週間以内に治まっていくことが多いとされています。しかし、次のような場合は注意が必要です。
- 2週間以上経っても治らない
- 何度も同じ場所に繰り返しできる
- 口の中の広い範囲に多数できる
- 痛みがどんどん強くなる
- しこりを感じる
このような症状がある場合、口内炎以外の病気が隠れている可能性があります。ベーチェット病(全身の粘膜に炎症が起こる病気)、口腔がん、血液の病気などが考えられるため、詳しい検査が必要です。長引く・繰り返す口内炎は自己判断で放置せず、歯科医院を受診してください。
なお、日本口腔外科学会の診療ガイドラインでは、2週間以上治らない口内炎の一部について悪性腫瘍の可能性が指摘されています。
エムズ歯科クリニックの口内炎治療
当院の治療の特徴
エムズ歯科クリニックでは、口内炎に対して炎症を抑える薬の塗布を中心とした治療を行います。また、多発する場合や繰り返す場合は別の原因も考え、必要に応じて大学病院をご紹介します。患者さまの状態を丁寧に診察し、単なる口内炎なのか、他の病気が関係しているのかを見極めることを大切にしています。
診察の流れ
- 1
問診
まず、いつから口内炎ができているのか、何個あるのか、痛みの程度、繰り返しできているかなどをお聞きします。生活習慣や体調についても伺います。
- 2
視診
お口の中を拝見し、口内炎の位置、大きさ、形、色を確認します。周囲の粘膜の状態もチェックします。
- 3
原因の特定
物理的な刺激が原因かどうかを調べます。詰め物の縁が当たっていないか、入れ歯が合っていないかなどを確認します。
治療方法
| 薬の塗布 | :口内炎の表面に、炎症を抑える薬を直接塗ります。ステロイド系の軟膏や、粘膜を保護する薬を使用します。痛みが強い場合は、痛み止めの成分が入った薬を選びます。塗布後は薬が患部にしっかり留まるよう、30分程度飲食を控えていただきます。 |
|---|---|
| 原因への対処 | :詰め物や被せ物の縁が当たっている場合は、その部分を滑らかに研磨します。入れ歯が合っていない場合は調整します。こうした刺激を取り除くことで、口内炎の治りが早まることが期待できます。 |
| セルフケアの指導 | :ご自宅でできるケアもお伝えします。お口の中を清潔に保つこと、刺激の強い食べ物を避けることなどをアドバイスします。 |
大学病院への紹介が必要な場合
次のような場合、当院では大学病院の口腔外科や専門医をご紹介します。
- 口内炎が複数個、同時に多発している
- 何度も繰り返しできる
- 2週間経っても改善しない
- 全身症状(発熱、倦怠感、関節痛など)を伴う
- 通常とは異なる見た目をしている
これらの場合は、血液検査や組織検査など、より詳しい診断が必要になることがあります。多くの患者さまを診てきて感じるのは、「大学病院を紹介します」とお伝えすると不安に感じられる方が多いという点です。しかし、これは慎重に対応するためのものです。良性のこともありますが、組織を採取して病理検査を行い、その病変が問題ないことを確かめることを大切にしたいと考えています。
治療について知っておきたいこと
治療期間と経過
通常の口内炎であれば、薬を塗ることで3〜7日程度で痛みが和らぐことが期待できます。完全に治るまでには1〜2週間かかることが一般的です。ただし、口内炎ができた原因によって治る速さは変わります。疲労やストレスが原因の場合、生活習慣を改善しないと繰り返すことがあります。
治療のメリット
- 痛みの軽減:薬を塗ることで炎症が抑えられ、痛みが和らぎます。食事や会話がしやすくなることが期待できます。
- 治癒の促進:薬によって粘膜の修復が促され、自然に治るのを待つよりも早く治る場合があります。
- 原因の除去:物理的な刺激が原因の場合、それを取り除くことで再発を防ぎやすくなります。
- 他の病気の早期発見:診察を受けることで、口内炎に似た別の病気を早期に見つけられることがあります。
治療の制約について
口内炎の治療は、基本的に薬を塗って炎症を抑えることが中心です。特効薬があるわけではなく、根本的には体の自然治癒力に頼る部分が大きいのが実情です。症状によっては、数日おきに薬を塗りに来ていただくことがあります。アフタ性口内炎など、はっきりとした原因がわからない場合は、対症療法(症状を和らげる治療)で対応します。
費用について
口内炎の治療は保険診療で行います。3割負担の場合、初診料や検査料を含めて1,000円〜2,000円程度が目安です。薬の処方がある場合は、別途薬代がかかります。症状や治療内容によって費用は変動します。
再発予防のために
口内炎は繰り返しやすい症状です。次の点に注意すると、再発を減らせる可能性があります。
| お口の中を清潔に保つ | :毎食後の歯磨きを丁寧に行い、口内の細菌を減らします。 |
|---|---|
| 刺激を避ける | :熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの、硬いものなど、粘膜を刺激する食べ物は控えめにします。 |
| 栄養バランスを整える | :ビタミンB群(特にB2、B6)を含む食品を積極的に摂ります。レバー、卵、納豆、バナナなどがおすすめです。 |
| 生活リズムを整える | :十分な睡眠を取り、疲労を溜めないようにします。ストレスを上手に発散することも大切です。 |
| 粘膜を傷つけない | :食事中に頬を噛まないよう、ゆっくり落ち着いて食べます。 |
よくあるご質問
一般的なアフタ性口内炎は人から人へうつりません。ただし、ヘルペス性口内炎はウイルス感染のため、他の人にうつる可能性があります。タオルやコップの共用は避けた方がよいでしょう。
市販薬も有効ですが、歯科では症状に応じて処方薬を選べます。ステロイドの濃度が高い薬や、麻酔成分を含む薬など、市販薬にはない選択肢があります。また、診察によって他の病気が隠れていないかを確認できる点も大切です。
体質的な要因もありますが、生活習慣の影響も大きいと考えられています。疲れやすい方、ストレスを感じやすい方は口内炎ができやすい傾向があります。栄養バランスの偏りも関係します。
はい、診察できます。お子さまの場合、手足口病などウイルス性の口内炎も多いため、全身症状がないかも含めて確認します。症状によっては小児科への受診をおすすめすることもあります。
歯磨きは継続してください。ただし、口内炎の部分は優しく丁寧に磨きます。やわらかめの歯ブラシを使い、刺激の少ない歯磨き粉を選ぶとよいでしょう。痛みが強い場合は、うがいだけでも清潔を保つことに役立ちます。
繰り返す口内炎の背景には、慢性的な疲労、栄養不足、ストレス、免疫力の低下などがあります。ベーチェット病や鉄欠乏性貧血など、全身の病気が関係していることもあります。繰り返す場合は、一度詳しく検査を受けることをおすすめします。
冷たい水で口をすすぐと一時的に痛みが和らぐことがあります。刺激の強い食べ物を避け、やわらかく温度が低めの食事を選びます。市販の鎮痛剤を使うことも一つの方法ですが、症状が続く場合は受診してください。
見た目だけでは判断が難しいことがあります。口腔がんの特徴として、2週間以上治らない、しこりがある、出血しやすい、痛みがないこともある、などが挙げられます。心配な場合は早めに受診し、必要に応じて組織検査を受けることをおすすめします。
まとめ
参考文献
日本口腔外科学会「口腔外科疾患診療ガイドライン」
厚生労働省「医療広告ガイドライン」
日本口腔内科学会「口腔粘膜疾患診療指針」
